私の名前は天馬ふぇみお、誰がいつから言い始めたのかは知らないが、男女の愛のロマンを紡ぐデジタルコミックアーティストという意味で、『E-ロマン画家』と呼ばれている。
 震災から一ヶ月がたち、少しずつ世間も落ち着きを取り戻してきたが、まだ予断は許さない。

エロ漫画家・・・もといE-ロマン画家という下種な立場を忘れて久々に真面目に腹に溜まる思いを書き記したいと思う。

《庶民の怒り》

 広く世間を見渡すと、世は庶民の怒りで溢れている。ちなみに、恋人も友達もいない引きこもりオナニストの私が言う「広く見渡した世間」というのは、ミクシーやら2ちゃんねるやらヤフーコメントランキングやらテレビのワイドショーやらをひっくるめた19インチのモニターに収まる多少狭めな「世間」であることを先に注釈しておきたい。

 そう、庶民は怒っている。

 例えば「ダルビッシュが5000万円寄付した」なんて記事にすら、ダルビッシュを讃える意見以上に、「それに引き換えクソ民主政権のせいで・・・・」「スーパー堤防を仕分けしたレンホウは被災者に土下座しろ」なんてコメントが溢れる。そう、世の中は庶民の怒りで溢れている。

 福島原発が予断を許さない状況の中、いよいよ東京から関西方面に逃げよう、なんて人もちらほら出てきたらしい。

 東電社員がブログで「計画停電で自分達を被害者のように感じるのはやめてほしい」と書いたら大炎上してブログが閉鎖に追い込まれ、東電社員はいまや社員寮の看板を隠さなければならないくらい、庶民達の怒りを買っている。

 そして計画停電や節電をよぎなくされた首都圏在住の庶民はパチンコ屋にも怒りを燃やす。
停電さすならその前に関東中のパチンコ屋を廃業させろ、と。

人間を堕落させるギャンブル産業に対して庶民の怒りの溢れている。

 「政府や東電のいうことは信用できない」
「放射能汚染はもっとひどいはずだ」
周りでそんなことを言う方々は多い。

「東電幹部と民主党閣僚が原発で作業してくればいい。東電社員はこういうときのために普段高給もらってんだろ」なんてコメントもたまにみる。

年収一千万超えるような高給取りの一流企業の社員に対して庶民の怒りが渦巻いている。



 ミュージシャンの斉藤和義が原発を皮肉る風刺の効いた替え歌をYOUTUBEで発表し、話題を集めている。

この国を歩けば原発が54基
教科書もCMも言ってたよ安全です

俺たちを騙して言い訳は「想定外」
                       』


 そう、庶民は東電に騙された怒りと無能な政府への怒りでこんなにも満ち溢れているのだ。



 ところで、「庶民」の定義とはなんだろうか。ココに面白いデータがある。

○年収800万円以上の民間給与所得者の割合は、約8%。だがその納税額は、全体の60%を占める。
○年収200万円以下の労働者の納税額は、全体の1.7%。


 民間給与所得者の92%が年収800万以下ということだが、この国のもろもろの公共サービスの大半は残り8%の高給取りの税金によってまかなわれているということだ。

 なので、庶民とは年収800万円以下の方々と、ここでは定義してみたい。


 ちなみに私の今年の確定申告では、アシスタント代なんかをひいて計算したら800万の半額以下の年収だった。
しかも、印税や原稿料には消費税5%が上乗せされているのだが、売上1000万以下の個人事業者は消費税を納める必要が無いので、20万円以上の消費税分の金額を懐に入れている計算になる。

 毎回原稿料からあらかじめ税金が10%も引かれてるので税金をいっぱい取られてるように錯覚してしまうが、還付金でたんまり返してもらっているので、よくよく考えると払ってる所得税は世間様に申し訳が立たないくらいに少ない。

 私は庶民の中の庶民といっても過言ではない。

 ところで、テレビの街頭インタビューでよく聞く言葉がある。
「庶民の気持ちが分かってない」「庶民の為に何もしてくれない」「庶民が・・・」「庶民が・・・」

・・・・・・・・政府は庶民を守り、庶民が暮らしやすい国づくりをするのが当たり前、金持ちは庶民のために還元するのが当たり前・・・そう、庶民が平穏に暮らせる社会こそが平和な社会なのだろう・・・きっと。

 しかし、ペンネームで検索すると「凌辱!凌辱!!股凌辱!!!」「凌辱刑」「私は凌辱大好きな変態漫画家です」なんてタイトルの単行本がうじゃうじゃ出てくる私のような人間が、街頭インタビューで
「出版不況で本が売れない。このままじゃ生活できない。国は何をやってるんだ!」
などと言おうものなら、
「売れないのはお前が才能ねーからだよ」
「とっとと廃業しろ、性犯罪者予備軍が!」
と非難の嵐であろう。

 ちなみに、本来ならここでアマゾンの私の書籍のリンクを貼りたいところなのだが、アマゾンでは数年前から「凌辱」「レイプ」などという言葉がNGワードに設定され、それらの言葉が入ったタイトルの本は取り扱われなくなってしまっている・・・。もっと前からそういってくれれば別のタイトルにしたのに・・・(´・ω・`)

 とにかく、私は収入的にはまぎれも無い「庶民」であるのだが、残念ながらレイプ系エロ漫画家という社会的地位を加味したなら、間違いなく庶民以下、江戸時代で言うところの「えた・ひにん」レベルの社会の最下層の賎民なのである。
 そして、なんだかんだでポルノとサブカルチャーに寛容なこの国で、お金持ち達の払う税金によって支えられた公共サービスの恩恵を受け生活を送らさせてもらっている。

 庶民なら「景気が悪い!国はなんとかしてくれ!」といえるはずなのだが、エロ漫画家はそんなことは言わない。逆に「児童ポルノ法改正?国は余計なことしないでくれ!」と懇願する立場なのだ。

 そんなえた・ひにんの立場からあえて問いかけたい。醜い嫉妬丸出しにしてあえて言いたい。

 庶民ってそんなに偉いのか?・・・と