私の名前は天馬ふぇみお、女王様に言われたことはなんでも守る律儀なe-ロマン画家である。

 そんな私は、もちろん仕事の上でもイエスマンで、編集さんから言われたどんな理不尽なことも、嫌な顔せずにハイと答えて引き受ける・・・・いや、ひょっとしたら知らないうちに嫌な顔になっていたり声のトーンがあからさまにローテンションに変わったりしてるのかもしれないが・・・・とにかくNOと言えない男である。


《編集の暴言》

 そんなイエスマンな私も、一度だけ、女王様の命令に背き、「アナルもういっかい調教してやろうか」との申し出を蹴っ飛ばしてやったことがあるし、後にも先にも一度だけであるが、若気の至りで編集さんにブチ切れてしまったことがある。

 今回はその時のことを書こう


 大昔、書いてた雑誌が潰れて別の雑誌に引き取ってもらったのだが、その時に最初についた担当がM氏という人だった。

 やたらつっけんどんな話し方をする人だったが、その気は特に気にも止めず、「ネームじゃなくてプロットを最初にください」と言われたので「分かりました」と言って凌辱モノのプロット(話の内容を文章で簡単にまとめたもの)をFAXした。

 返事が来たのは2日後で、プロットの内容に関しては何も言わず、つっけんどんな口調で一言「プロット出すときはキャラ表も一緒にお願いします。」と言われた。

 私も当時単行本2冊出した程度の駆け出しだったので自分が常識知らずだったのかと思い「失礼しました」と言って、すぐキャラのイラストを書いてFAXした。

 それから返事が来たのはさらに二日後で、「フェラチオのシーンをどこかに入れてください」と例の口調で言われる。
(だったら最初に返事した時にその指摘しろや!(##゚Д゚)

なんか馬鹿にされてるような気がして少なからずイライラしてきた。
だんだん私の中でのM氏のイメージは↓こんな感じに脳内補完されていく。
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しかし仕事は仕事なので、我慢して直ちにプロットを直してFAXする。

 その雑誌で昔から書いてた友達の作家さんが、担当が変わったとたんゲッソリとしてやたら私に愚痴をこぼすようになっていたのだが、たまには私のほうが愚痴を吐きに行こうと思ってその作家さんのとこ行ったら、どうやら彼の担当も私と同じM氏のようだった。 

 返事が来なくてすることがないので2chのエロ漫画家スレッドを見ていたら、「このエロ編集はヤバイ!」的な話題で必ず真っ先に名前が上がっていたのが私の担当のM氏だった。

 返事が来ないまま一晩過ぎて、最初にプロットを出したのは月曜なのに、もうすでに金曜日になっていた。

 締切は容赦なく近づいてくるのに、その日のうちに返事貰わないと週末2日をさらに無駄に過ごす羽目になる。

 仕方ないので金曜の夕方になって電話をかける。
 M氏は会社にいて、とてもめんどくさそうな感じで電話に出た。

 「2chで書かれるくらいにヤバイ編集」というバイアスがかかったせいでそう見えるだけなのかもしれないが、一連の不毛なやりとりが、「最初に舐められないように一発ぶちかまして主導権握ってやるぜ((o(>皿<)o)) !!」的な悪意の産物のように思えてきてならなかった。

 しかし仕事は仕事だ、売れない新人作家が編集に楯突くことは出来ない。

 「プロット直してお送りしたのですが、無事届いてますでしょうか?」届いてるに決まってるだろうが、少し皮肉を込めてそういったところ、Mがつっけんどんな口調で言ったことには・・・・
「雑誌名からも分かる通り、うちは”純愛”を売りにしてるんで、そもそも凌辱モノはNGです


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最初に言えやぁあぁあぁぁΣ(゚д゚lll)!!!!!!


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 人にキレたりするのは苦手なのだが、その時は、ディオに血を吸われ搾りカスのようになった祖父ジョセフの姿を見た承太郎のごとくにブチ切れた。
 電話越しのM氏に強い口調で「それ最初に言ってくれ。つーか返事遅すぎだし、一週間無駄にした上に週末も無駄にする羽目になった。こちとら時間を無駄にする余裕なんかないんだ」という内容の文句を言った。
 かろうじて敬語はつかっていたと思うが、気弱そうなイエスマンの意外な反逆に面食らったことだろう。
 電話を切ってから、この先もM氏とやり取りするのかと思うと気が滅入った。


 しかしM氏とはその後会うことも話すこともなかった。ほかの編集さんから電話が来て「Mは担当外れるので私がこれから担当になります。」と言ってくれたのだ。その担当さんには良くしてもらったのでその後もその雑誌でしばらく仕事をさせてもらったが、M氏はその後フリーになってその出版社からもいなくな今何をされてるかはわからない。

 黒歴史ってほどのことでもないが、後にも先にも私が編集さんにブチ切れたのはその一回きりである。

 私の名は天馬ふぇみお、いつか編集さんをアゴで使う立場になりたいと夢精・・・いや・・夢想しつつ、今日もペコペコ頭を下げ続けるイエスマン画家である。