私の名前は天馬ふぇみお、基本E-ロマン画一筋な私であるが、一時期プレイコミックという一般誌で連載を持ち、更にこれは誰にも言ったことがないのだが・・・別名義で某週刊少年誌に読み切りが載ったことが一度だけある

何故誰にも言わなかったかといえば・・・完全に黒歴史だからである。


《漫画家・渡瀬悠宇氏、編集との確執を告白》

 サンデーで連載中の作家、渡瀬悠宇氏が、連載当初の担当編集との確執を語ったそうだ。なんでも、担当編集が毎回好き勝手にストーリーを弄くり倒し、結局自分の中で不本意なストーリーを描かされ続け、漫画家をやめようかと思うほど当時は辛かったそうだ。
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 「わかる・・・その辛さ分かるぜ・・・」

 私ごときがこう言ったら「お前如きエロ漫画家に何が分かる∑(゚Д゚)!?」と渡瀬先生のファンから肛門にシャーペン突き刺されそうだが、実際、私もその辛さがよくわかるし、そういう編集が実際にいることもよく知っている。
 何故なら・・・私の黒歴史である某週刊少年誌に載った読み切りは、まさにそんな感じで不本意なママ描かされたものだったからだ。

 編集さんの中には、元々作家志望、漫画家志望だった人は結構いて、実際編集上がりの有名原作家も何人かいる。
 フリーになって活躍できる才能がある人ならいいのだが、才能なくても自分でストーリーを考えたがる編集さんは少なからずいて、残念ながら新人作家だと力関係上、それを断ることは出来ないのだ。

 私が読み切り描いた時の編集さんはまさにそのタイプで、打ち合わせの場で「やべ、すげー面白いネタ思いついたヽ(`▽´)/」とばかりに私に話すのだが、全く面白くない。

 というか、どんな優れたストーリーでも、口頭でプロットを説明されても大抵面白いとは感じないものだろう。だから、編集さんのストーリーもひょっとしたら調理次第では面白くなったのかもしれないが、少なくとも口頭で聞いても、私には面白さは理解できなかった。

 だから私は「それよりこういうストーリーはどうですかね?」と口頭で説明するが、「つまらない」と一蹴される。
 双方とも双方の意見をつまらないと思ってるわけだが、力関係的に結局、編集さんが面白いと考えた(そして私的には面白いと全く思わない)ネタを、絵コンテとしてまとめさせられるハメになる。

 
 漫画家なら誰でも経験することだが、「やべ!超斬新な面白いネタおもいついちったヽ(`▽´)/」と思っても、一晩寝て冷静に見つめなおしたら大抵ありふれた面白くもないネタなのである。

 作家なら”一瞬の思いつき”の怖さは知ってるが、編集さんは知らない。

 打ち合わせの場で「やべ、すげー面白いネタ思いついたヽ(`▽´)/」と言って昂ぶるままに漫画家にネタを話したら、それをその後具体的な形にする作業を強いられるのは作家なのだから。

 で、そうして出来上がった絵コンテをほとぼり冷めてから見た編集さんは「・・・あんまり面白くないな」と一蹴する。

殆どアンタに言われたままに描いたストーリーだよ∑(゚Д゚)!!
・・・
とキレるなんて選択肢は新人作家にはないので、前回書いた絵コンテの原型を殆ど留めない形でまた編集さんのその場の思いつきのストーリーを描かされ・・・と地獄の打ち合わせは続いていく。

 この絵コンテ無限地獄は、メジャー誌を志す新人作家なら誰もがぶち当たり、大多数が心を折られ連載を勝ち得る前に討ち死にしていく。私は漫画を描く作業が全く苦にならないタチだが、その無限地獄の最中だけは漫画を描くのが苦痛だった。

 同業のエロ漫画家さんの中にも、編集さんとの確執で心が消耗してしまう方が少なからずいるようなのだが、少なくとも私はエロ漫画編集さんとのやりとりで腹が立った事は殆どない・・・そりゃ一度か二度はあったけど

 それというのも・・・あのメジャー誌のコンテ無限地獄に比べりゃナンボかマシだもの(´;ω;`)、と思えてしまうからである。

 そう考えると、あの経験もマイナスではなかったんだなーと、今は前向きに考えられる。

 なので作品は読んだことないが、地獄を生き抜き、今も活躍されてる渡瀬先生には共感と尊敬の念を禁じ得ないのである。