私の名前は天馬ふぇみお、争い事や揉め事を嫌い、植物のように平穏に生きたいと願ってきたキラークイーン e-ロマン画家である。

 植物は殺し合いをすることもなければセックスに明け暮れることもない。理想的な平和な生活がそこにある・・・・と思っていたが、どうやら違うらしい。植物も子孫を残すためには”雄しべ”という名のが細長い突起物から放出した花粉を"雌しべ"という名の穴まであの手この手を使って届けなければならないらしい。生存競争と生殖競争に必死な点は人間となんら変わらないのだ。

 私はそのことをとある学習教材から学んだ。
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ちなみにその教材は18歳以下の子供は読めない大人の科学教材であった。


≪アメとムチ≫

 さて、前回とある編集さんのやり方にについて疑問を呈するようなことを勢いに任せて書いてしまった。揉め事や面倒ごとを嫌う私にとってそんな危険案件に触れるのは不本意なのだが、書いてしまった以上は続きを書かねばなるまい。
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 私がエロ漫画家やり始める前の大昔、もう20年近く前のことであるが、漫画家を志そうと決めた私は投稿作を描いて出版社に持ち込んだ。
 多くの漫画家志望者がそうであるように根拠もなく自信満々で「お前んとこの雑誌を最初に選んでやるんだから感謝しろよ?」くらいの気持ちで出版社に向かい、多くの志望者がそうであるように10代男子のおちんちんのごとく高く伸びた天狗の鼻をボッキリ折られ打ちのめされて帰っていった。
 しかし多くの志望者がそうであると思うが、「あの編集がバカで見る目ねーだけなんだよ!他の編集に見せればきっと反応が違うはずだぜ!」と気を取り直してほかの出版社に行き、やっぱり打ちのめされて帰ることになり、それを繰り返してるうちに身の程を思い知らされて、最後の方には「自分みたいなゴミに時間使わせて大変申し訳ないんですけど原稿見ていただけませんでしょーか(´・ω・`)?」という謙虚というか卑屈な感じになっていく訳だ。


 そんな持ち込み回りの時、ひとしお記憶に残っている編集さんがいる。「ヤン●ガ ア○○ーズ」という雑誌に持ち込んだ時のことだ。
 
 副編集長さんが見てくださったのだが、やっぱりもけちょんけちょんのボロカスに言われた。ただ、どこがどう駄目か、というのをいちいち事細かに論理的に指摘するので「この編集の見る目がねーだけなんだ!!」という精神的逃げ道を塞がれ、作品がどうしようもないダメダメであることを当時の私も認めざるを得なかった。
 それはそれで激しく凹まされた訳だが、最後にその編集さんはニッコリ笑って「正直今はまだプロには程遠いレベルですが漫画はペンを握った時間だけ上達するので頑張ってください」と言ってくれた。
 私はそのあと「もっと頑張ろう!」と思い「修行し直してまた投稿するときは真っ先にここの雑誌に持ち込もう!」と心に決めた。

 結局その編集さんとお会いしたのはそれが最初で最後なのだが、今思い返してもきっと有能な人なんだろうなぁと思う。

 あ、勘違いしないでほしいのだが、この編集さんが"最後に優しくしてくれたから"なんてメンヘラかまってちゃんみたいな理由で言ってるのではない。
 人間の本性なんかちょっと話したくらいで分かるわけがない。いかにも「あー、こんな奴の相手時間の無駄だわぁ」みたいなつっけんどんな応対した編集さんもいたが、実は人との接し方が不器用なだけで本当はすごいいい人かもしれないし、逆に厳しいこと言いつつも最後に優しい応対をしてくれたその副編集長さんはひょっとしたら心の中では「バーカ、お前みたいな才能ないクズがどんだけペン握ったって時間の無駄だよ」とせせら笑っていた、なんてこともない訳ではないかもしれない・・・表向きの優しさだけで人間の評価が決まるなら結婚詐欺士は全員超イイ人になってしまう。
 
 ただその編集さんの本心はどうだったのかは関係なく、当時の私がまんまと「厳しい評価を受け入れ」なおかつ「頑張ろうと闘志を燃やし」かつ「またこの雑誌に投稿したい」と息巻いたのは事実な訳で、一流の編集さんっていうのは漫画家や志望者を上手に掌の上で転がせる人なんだろうなぁ、と今になって思うのだ。

 厳しいことを論理的に指摘しつつ最後にちょっとフォローを入れる・・・よく言えば"気遣い”だし、悪く言えば打算めいた”アメとムチ”なのだが、それは人間関係において誰もが当たり前に使ってる手法である。

 私も漫画家として仕事するようになり、アシスタントさんを雇う時もあるのだが、アシさんに駄目出しする時は必ず「どこが駄目かを論理的に説明して」「この部分はすごいよく描けてるんだけど」「この部分は駄目だから直してね」と頼むようにしている。
 お金を払ってる以上立場的には私のほうが強いわけだが、必ずそういう風にアメとムチをセットにして駄目出しする。
 私が優しくていい人だからではない。安くないアシ代を払うからにはしっかり仕事してほしい訳で、その為には頭ごなしに注意するよりアシさんのモチベが上がるようにアメとムチを駆使したほうがいい。単純にそっちのが自分にとってメリットがあると思うからそうするのだ。
 
 友人に駄目出しする時に頭ごなしに注意する奴はあまりいないのは、そんなことすりゃ揉め事になるのがわかりきってるからだが、しかし、こと「お客様と従業員」だったり「部下と上司」だったり「大物漫画家と下っ端アシスタント」だったり「大手誌編集と下っ端漫画家」と力関係に大きな差があると相手は問答無用で従順せざるを得ない。
 しかし力関係に劣る相手が自分の言うことにホイホイ従うからといって、必ずしも相手が納得ずくで従ってるとは限らず、嫌々従ってるだけならそんなモチベーションで生産効率は当然上がらない訳で、だったら同じ言うことを聞かせるにしてもアメとムチを使い分けて上手に掌で転がしたほうがいいに決まってる。
 人の上に立つ人間ほど何もしなくても相手は言うことを聞いてくれるけれど、人の上に立つ人間ほど上手に他人を転がすスキルがあって然るべきだと思うのだ。

 でもって、漫画家志望者に対しても、内心どれだけ「こいつ才能ねーわ」と思っていても、いつ金の卵に化けるかは分からないのだから、上っ面だけでもアメとムチを使って上手に掌で転がして「次回も頑張ってこの雑誌に投稿してやる!!」と思わさせてこそ敏腕編集なんじゃないかと思う次第なのである。

 なんかだらだらと面白くもない上にまとまりもない文章を書いてしまった。

 結局"金の卵"にはなれず、ただ日々金玉を描いてるだけの零細エロ漫画家の私が偉そうに書ける内容ではないのだが、とにかくだらだら長い文章をここまで読んでくれた方にはありがとう頭と亀頭をさげたい(m´・ω・`)m

(終)